五十六段 母が逝った
2012年5月31日死去(享生89歳)
本当はこの欄には本来母が逝った時の悲しみを綴っていた。
しかし何故かここから消えてしまっていた。バックアップもどうしたわけ訳かこの前後は有るのに56段と57段がぬけている。
それでなくなる数10年前にけがをして入院した時の文章が残っていた。それを代わりに載せる。
母の入院
『 旅行中に我が家の「大蔵」「外務」「厚生」「農林」「環境」を一手に引き受けていた大臣が 転倒骨折をし緊急手術 目下入院中である。
「通産」と「運輸」しか担当したことがない無能大臣にとっては 青天の霹靂。
学生の下宿時代以来の「大蔵」「厚生」「農林」「環境」である。
これで実質的に臨時総事大臣に就任した。
しかし 我が家の会計は一体どうなって どこにお金があって どこから出金したらいいのか どこに支払いがあるのか
冷蔵庫に何があって 賞味期限はどうか 米の水加減は 塩・砂糖はどれ モヤシは日持ちしないがニンジンは結構いける サトウのチンして2分のご飯は美味い コンビニの惣菜は高いから近くのスーパーで買う 惣菜も独り分では結構量が多いから残りを見ながら次の惣菜を買う ゴミの出し方は透明の袋を買ってきて分別の仕方は近所の人に聞いてそれに従う 犬の餌は朝晩2回でドッグフードに牛乳をかける散歩は朝晩2回インキの多くかかったチラシを2枚持っていきウンチをその上にさせて持ち帰ったウンチは庭の一角に穴を掘って埋める。庭の雑草取と水遣り。
学生時代の洗濯機は脱水はローラーだったが
今は スイッチと洗剤を入れれば 水量 洗い すすぎ 脱水 あとは 物干しだけ。
「外務」では お見舞いの対応 整理。
と 生存の為の生活が待ち受ける。
当初は多少の戸惑いもあったが 時間がたつにつれ一般的に言われる「主婦の世界」が垣間見える。
スーパーでの価格 商品事情 多くの人間関係 多数の生きる為の生活情報など日頃 見えなかった知識が 新鮮で興味深く開拓されていく。
ゴミの分別の煩雑さ 洗濯物の種類によるスイッチの選択と乾燥方。
報道で知る 某ハムの現状とか 産地の顔を強調した肉の売り場の表示
季節感の無くなった生鮮売り場の中に 細くなるスイカの切り売りに変わりに「梨」や「ぶどう」や「松茸」もちらほら。
「生存」生活で食事がなんといっても最大の行事。
毎日の買出しで 栄養とカロリーのバランス 賞味期限と購買量と在庫調整 希望と価格の比較 特に在庫調整には苦労する。
パック物の量が多すぎて ついつい 毎日同じ惣菜になってしまうし そうかといって材料を買えばほとんど冷凍にしておなねばならないし 「農水省」としては この辺のタイミングや調整は今後の課題である。
両眼で生活周辺を見渡すことが出来ると 「今日は何食べる?」「なんでもいいよ」という会話に対する反発の意味が解ってくる。
靴下を丸めて放り出したり 冷めた頃にお風呂に入ったり 帰りが遅くなるのに電話をしなかったり 趣味の作業で部屋を汚したり
休日は遅くまで寝ていたり とまあ日頃の小言の意味がよく判る。
臨時総事大臣の職をまっとうすべく 鋭意日々善戦している。
それにしても 「生存生活」のなかからは 「趣味の世界」なんぞはまったく視野に入ってこないことが判明した。おそまつ・・・・』