四十七段 宇治を歩く
あれほど何度も宇治に行っているのに 今日の訪問地はほとんど初めてである
それほどに 「平等院」の存在が大きい
しかしこの地ほど「院」の無かった時代から 万葉の時代から 平安の時代から 多くの人々から愛された処はない
地理的にも 奈良の都と平安の都を繋ぐ位置にあり 北をとれば琵琶湖に 南にとれば難波に繋がる
交通と 風光明媚 都に近い これはドラマの舞台としては 最適だったろう
考古学的にも 泉川(木津川)が流れ込む巨椋海(おぐらのうみ=八幡から対岸の宇治の山すそまでの大きな泉海)
があり 漁業が盛んで この頃の遺跡は 八幡の山すそと宇治・城陽の山すそに連なっている
京阪電車中書島で宇治線に乗り換える 終点は「宇治」だが 今回は手前の「木幡」で降りる
駅から南に15分ほど歩くと「二子塚古墳」に行く


簡素な住宅地の中に 公園のように整備された全長110mの前方後円墳で2重の環濠があったらしい
宇治では最大の古墳で この地域の6世紀前半の大豪族の墓。
この一帯は寺界道遺跡など縄文時代からの生活の痕跡遺跡が住宅の開発に伴い 多く出土している。
一駅歩いて「黄檗山」に行く
南に10分住宅街の一角に「瓦塚古墳」がある
遠めにみても古墳とは判らないような 開墾地(?)となりつつある
石碑でなんとか古墳とわかる
駅から「JR奈良線」国道24号線を渡切って北に15分 「萬福寺」がある

黄檗山萬福寺は臨済・曹洞とともに 日本三禅宗のひとつ黄檗宗としての 総本山
1661年 中国僧隠元により開山
比較的時代としては新しいのだが その壮大さと 荘厳さは 四代将軍家綱 「桂離宮」「修学院離宮」にも関係する
後水尾法皇などの後押しがいかに大きいかが伺える
更に北の山手に進むと 「隼上り瓦窯跡」がある
宇治市 遠くは対岸の八幡までが眼下に広がる
この地で 全長10mほどの7世紀の登り窯4基が確認されている

現在は史跡公園として整備されている
ここから次の駅「三室戸」まで歩く
西国十番「三室戸寺」はツツジ・桜・石楠花・紫陽花寺としても 蓮寺としても有名である
駅と寺の中間に茶房「ふじ井」がある

なんでも宇治の茶園の若夫婦が出していて 茶そばや茶団子は茶葉製造所ならではの濃厚さ
今日の昼食はここの そばとあんみつ
宇治茶を胆嚢して 寺に上る
門前までの参道は ツツジ・石楠花と紫陽花が所狭しと植えられている
今は何もない

約1200年前 桓武天皇のお父さん光仁天皇の勅願により創建
本堂の前は蓮の畑
「ふじ井」の前を通りもと来た道をもどり駅を越えて
応仁天皇の皇子で仁徳天皇の弟 菟道稚郎子皇子(うじのわきいらつこのみこ)の陵墓に向かう
宇治市の名前の由来とも思えるこの皇子の名前は一体なんだろう
この「うじ」とはあの「うじ虫」のうじなんだろうか
そうだとすれば どんな感覚で「うじがわく」と呼ぶんだろうか
「えみし」とか「虫丸」とか これはユーモアなのか
さていよいよ終点駅「宇治」につく
宇治橋を渡れば「平等院」に行くが 渡らずに「源氏物語ミュージアム」に向かう
源氏物語の後半「宇治十帖」の舞台がこの宇治
平等院との対岸の山すそに「さわらびの道」や世界文化遺産の「宇治上神社」がある
そのど真ん中に1998年にオープンした(宇治市立 入館料500円)

展示物は瀬戸内寂聴の「源氏物語」の原稿や「六条院」の模型
篠田監督の「浮舟」のCGがみもの
「源氏」に関する資料・文献も多くある
特に感心したのは「院」を意識したような この館の造り
館の周りは川と池と四季の草花に包まれた平屋
そそ壁は出来うる限りのガラスが使われているためか外と内の一体感が素晴らしい

庭に咲く「紫式部」
館を出て少し山手に行くと「早蕨の道」の道しるべ
小説とはいえ やはり式部もこの近辺を散策したんだろうか
早蕨を山沿いに歩いていくと 古びた「神社」にぶつかる
これぞ 最近世界遺産に指定された 日本で一番古い建物と言われる神社
宇治上神社(うじかみじんじゃ)


遥拝所 本殿(国宝)
最近全国からここで結婚式を挙げる人が増えたそうだ
応人・仁徳・菟道稚郎子皇子をお祀りしているようだ
ここから宇治神社を経て 宇治川沿いに出る
ミュージアムでの「浮舟」を思い出しつつ 身を投じたのはあの辺だろうかなどと想像しつつ
のんびりとした秋の川縁をそぞろあるく
再び京阪「宇治駅」に出てきた
駅前からタクシーで「宇治市歴史資料館」に行く
5時の閉館まであと1時間ほどしかない
車から飛び降り 駆け足で入館する
なかなかりっぱな展示内容である この近辺の遺跡の紹介と出土物が所狭しと出ている
今日はそのほんの一部を行ったに過ぎない
展示の中で この地域で一番大きい円墳「庵寺山古墳」にどうしてもいきたくなって
資料館前からバスに乗って 住宅街に隠れている円墳をやっとこさ 探し当てた

1600年ほど前
直径56m 高さ9m
一箇所の通路を除いて 回りは全て住宅
なんでも一年に一度 階段がオープンにされるとか
「平等院」の周辺をぐるっと駆け足で巡った
改めて人間の行動の広さと深さを知った
完