四十一段 「平壌の水槽」を読む
「平壌の水槽」カン・チョルファン著 ポプラ社
を読んだ。
凄まじいというより 悲しみと嘆息のうちに読み終えた 今 更に改めて人の業の深さを感じ
衝撃のあとの空虚に交錯している。
在日朝鮮人だった著者の祖父母が意を決して 豊富な財産(京都でパチンコ屋)とともに一家全員で帰郷した。
朝鮮戦争後 軍事政権下 経済的にも疲弊し 北の脅威におびえながらの窮屈な状況の南に比し ソ連の支援下 金日成の「アメリカ帝国主義に対抗し 地上の楽園建設に向け 民族総結集」に呼応した。
突然の祖父の失踪と 官権による私有財産の剥奪 9歳の著者を含む家族全員が強制収容場送りとなった
祖父のスパイ容疑という名目である。
熱烈な共産主義者で 朝鮮人民共和国にも多大に貢献してきた祖母は 「何かの間違いだ。すぐに帰れる」と楽観視するも 極悪な収容場の長引く生活は家族を次第に寡黙にそして絶望の淵に落とし込む
ネズミが最高のご馳走 食べれるものはなんでも ゴキブリ・ヘビ・ネズミ・雑草
主食は一日一本のトウモロコシ
特有の「ぺラグラ」症状が出る。
10年の抑留の後 恩赦で釈放
数年の内に 父・祖母は亡くなる 祖父は依然所在不明
収容時に強制的に離別させられた母に再会するも
妹と母を残し 中国に脱出
北朝鮮の現状を世界に知らしめたいという一念から 韓国に出国
現在6ヶ国語に翻訳されて 世界に衝撃を与えている
ブッシュ大統領も甚く感動し ホワイトハウスに招待して1時間も対談している
彼の「金正日批判」はこの本によるところが大きいと思われる
国家による 詐欺 強奪行為に憤りを感ぜずにはおれない
人という動物は自己欲望を満たす為に ここまで出来るものなのか
人は生きる為に ここまで出来るんだ
北朝鮮では一人の自己満足を満たす為に あらゆるものが 犠牲になり 抑圧され 困難な生活を強いられる
しかし この国では 2〜3万のシロアリ族の自己満足を満たす為 あらゆるシステムが
「シロアリ族維持装置」として存在する
「大蔵女王シロアリ族」 の元
「道路シロアリ公団」「郵政シロアリ公社」「厚生シロアリ族」
法律も政治も経済も全て彼らのおもうままである
残念ながら すでにすべてを食いつくし財政破綻をしてしまったこの国で
いよいよこれから始まる形振りかまわない自己保全の所作は
抑圧された 近隣の悲惨な不幸を他人事として嘲笑できた最後の期間であったということを自覚させるものとなるであろう
完