番外編 その6
奥吉野温盛温泉・入之波温泉

入之波温泉(しおのは)はもう随分前から行きたかった温泉である
ただ公共交通の不便さがそれを阻んでいた
近鉄の駅からバスで1時間はかかる
以前は入之波温泉に近鉄系の温泉宿があり近鉄系のバスが走っていた
5~6年前その近鉄系宿が廃止されそれに伴い近鉄系のバスも無くなった
その後はタクシーか自家用車でしか行けなかった
数年前から所在地川上村のコミュニテーバスが強化され日帰りも可能になった
それで2年前に行こうした矢先のコロナ禍であった
さて紅葉には少し早いかなと思ったがその頃は人も車も多いだろうと紅葉を犠牲に敢えて決行した
途中温盛温泉(あつもり)(敦盛とひっかけているのだろうか)「杉の湯」を通るのでそこも立ち寄り湯とした
意外に素晴らしい温泉だった
近鉄は日本一長い私鉄
丹波橋から吉野まで2時間かかる 途中からの単線の退避が時間を重ねる
終点吉野の手前大和上市の駅前からバスが出る


入之波迄の直通バスは無く途中「杉の湯」で1時間30分待ちで入之波に行く(以前はここまでしかコミュニティーバスは来なかった。近鉄系バスが無くなって入之波に行くようになった)
入之波温泉までは1日2本で午前中は上市駅9時55分発しかない
次は14時25分である
乗客者は往復とも1人であった
30分程の乗車だが同年輩の運転手としゃべるしゃべる♫
年来の友人とドライブしているような雰囲気

大滝ダム
今年は雨が少ないそうだ
杉の湯の立ち寄り湯は11時からの受付
バスは10時25分に着くのでそれまで100m程のトンネルを抜けた
次のバス停「宮の平」に「森と水の源流館」があるので見学に行く
バスは「杉の湯」を通り越してそこまで行ってくれた
料金は1回200円である
運転手さんに感謝のお礼
吉野の森の村営の資料館である 迫力ある映像もあるらしい

入館料400円でいざと思ったら係員が
「すみません11時45分まで学生団体の貸し切りで入館できません」
という「ええ~大阪から来て 1名ですが」
「いや~学校関係者が一般の人との接触を嫌がりますので」
だって
学生はワクチンも打たずに団体行動しているんだろう
こっちとらは早くに済ましているちゅうに!!
この国の長き低迷の原因の一端を見た
仕方なく引き返す
「川べりに遊歩道が有りますよ そこならトンネルを通らなくて杉の湯前に行きます」
とバスの運転手さんに教えてもらっていた





「杉の湯」
それでも11時までまだ時間がある
宿の隣にある道の駅に行くと人であふれていた
観光バスが一台着いたようだ


(平日の若い客はなんだろう)
温泉宿は客対応と言い設備と言い温泉と言い素晴らしい
どの設備も手を抜いていない
帰りのバスの運転手にそれを言うと「村営だからね」
そうか村営はなんでもきちっとしているんだ





人数制限する場合も有りますとあったので心配していたが豈図らんや
殆ど独り占め状態 紅葉の損失分を十分上回る
温泉前発12:03分のバス迄ゆっくり浸かった
乗り継ぎのバスがすでに待っていた
朝と同じ運転手だと思って話していたら
どうも雰囲気が違う
あんなに喋っていたのにむっつりだ
バスに貼られている名前を見たら違う運転手
黒い顔に帽子を被って背格好も同年代も似ているから間違えるのも無理はない
10分ほどは車内に声は無かった


バスは大迫ダムに来た時道路はその上を走るのでので「すごいすごい」とカメラを片手に
絶景じゃ絶景じゃとはしゃぐ
その頃から運転手さんもほどけてきた

何かの話の途中運転手さんがひときわ声を大きくして
「10月で25年の家のロ-ンが終わるんです」
「へえ~10月て今月じゃないですかそれは良かったですね ご苦労様でした」
彼もよほど嬉しく相手が誰でもいい 言いたかったんだ 勝利の雄たけびをしたかったんだ
なんでも仕事で北海道や沖縄にいて定年 亡なった兄弟の畑や田んぼを
引き継いで嫁とやっているが慣れない農機具も大変で収穫もままならないとか
バスもあと数年で停職となるとか
午前の運転手さんの2人で午前と午後に別れて受け持っているとか
「でも仕事や趣味やなんでもいいから目的を持つのはいいことだと思いますよ 四季を感じて農業なんて最高の
仕事じゃないですか」と言った
バスは亀のような速さで後ろからの車を先に行かせながら
2人の会話ははずむ
信号もなし どのバス停にも乗客は1人も無し
途中バスを止めて窓越しに道端の女性と喋す
「今のが村長の娘です」
そうか選挙期間中だ
人の住む世界に入り込んだような故郷に入り込んだような
穏やかな人々の香りを感じた
入之波温泉は大迫ダムの斜面に引っかかっているように建てられている
もとは川底に有ったらしいがダムの建設で温泉施設も源泉も底から汲んでいると聞く
ここは秘湯としてライダーや温泉マニュアに知られている

(吉野コミュニテイーバス「やまぶき」)
バスは温泉の手前100m程の広場が終点
運転手が帰りはこの辺で待っててくださいと行って引き返す
建物は少々ぼろいが湯は完璧らしい
温泉宿は「山鳩湯」1軒のみ
駐車場は周辺にあるがどれも狭く道端に10数台止めてある
ナンバープレートを見ると京都・大阪・奈良・和歌山・兵庫と近畿が揃う

ここで問題がある
今 時間は12:40分である 帰りのバスは15:54分である
いくら温泉好きでも3時間は入ってられない
それで宿に入るまで1時間ほど周辺をぶらついて少し汗をかこう
といっても大迫ダム底の周辺しか行くところもない
すこし先に大きな橋がある







入之波温泉からのカルシゥムとナトリウムと鉄を含んだお湯の結晶が
水の少なくなった湖面の上に晒されている

大和上市からは大台ヶ原にいくバスも出ている

橋の上からみると真ん中に「山鳩湯」その下にお湯の結晶
左に「釣り場」

風が強い 橋が揺れているような気がする
どこかの水道橋崩落の映像を思い出して早くも引き返す
それでも1時間は経過していた
宿に戻り800円払って入湯


玄関は道路の下

なるほど
塩葉か 味は薄塩で鉄っぽい(人の血液の味)
一番底が温泉風呂で2階が休憩所3階が受付と食堂
宿泊室は少ないので宿泊は2名以上(受付はFAXのみ)
兎に角 客は老若男女ひっきりなしに来る(最早秘湯とは言えないかも)
ここから先の写真はNETでご勘弁

まあこの結晶
どうにも入りにくい(足袋がいるかも)
源泉温度は39.5℃ 少しぬるい
しかし肌に優しく内風呂でも何時間でも入ってられる
いつか勝浦温泉「一の滝」を思い出す
あそこは体温くらいの温度で「羊水に浮かんでいる」と思った
1時間30分ほど入湯してコーラを買って2階の休憩室に行く
もう指先の脂肪が無くなっていた

2階の窓を開けると例の黄色の結晶の元が真横にあった
関西では珍しい温泉だ
バスは澱みなくこの地を出た
帰りは上市まで直通だった それでも運賃200円 川上村の皆様申し訳ないです
一時の桃源郷を見たような心地よい一日だった
帰りのバスも大いに会話で賑わったことは間違いない
了